定位置に見知らぬ方に座られて思ひの人の姿を探す
――胡兴智
導きをいかにせむなど思ひつつ黒板を背に立つ初授業
――胡兴智
「言ひ初め」の言葉も怖し初授業生徒の瞳甘く鋭き
――胡兴智
伝授するものこそなかれお互ひに学びあふ時大切としつ
――胡兴智
教室と家との間行き来して振り子の如し教師のわが日々
――胡兴智
剣山の峰に冬ばら生けられて生きとし生けるものの喜び
――胡兴智
師の言葉胸に刻みて只管に生けゆく真紅の冬の薔薇(さうび)を
――胡兴智
樽酒をちびちび飲みてコーヒーに砂糖を入れてまた飲む真昼
――胡兴智
樽酒にコーヒーお茶など回し飲み後楽園の楽しみ多し
――胡兴智
枡酒の飲み方一つ教はりて舌に沁み入る塩の甘さの
――胡兴智