「グローバル人材の育成 下村文科相が意欲」

其他 2014年10月11日

 下村博文文部科学相・教育再生実行会議担当相が9月29日、日本記者クラブで記者会見し「グローバル化を担う人材育成が急務」「2020年までに幼児教育無償化を実現したい」など教育制度改革に強い意欲を示した。

 教育再生については第一次安倍内閣の時にも、野依良治・理化学研究所理事長(ノーベル化学賞受賞者)を座長とする有識者による教育再生会議が設置されている。下村氏は「同会議で提言されたことは結局9割実現しなかった」と語り、現在の教育再生実行会議(鎌田薫早稲田大学総長)が文字通り「実行」を重視した活動を続けていることを強調した。

 第一次から第五次にわたる教育再生実行会議提言を受け、教育委員の役割見直しを柱とする地方教育行政改革の法律化が図られた例などを詳しく説明した中で、とりわけ下村氏が強調したのが、グローバル化を担う人材の育成。「国内だけでなく世界という視点に立って子供たちを育てる」と強い熱意を示した。

 「ピーク時には米国への留学生が毎年5万人いたのに、今は2万人を切っている。韓国は日本の3倍、中国も10倍多い」。下村氏は日本の若者の内向き志向に危機感を示し、「子供たちが本当の意味のグローバル化を身につける」方策の一つとして、国際バカレロアの積極的な活用を挙げた。

 国際バカレロアは、国際バカロレア機構(本部ジュネーブ)が提供する国際的な教育プログラムで、国際社会で貢献できる人材の育成を目的とする全人教育が特徴。このうちディプロマ・プログラム(DP)は、2年間のカリキュラムを履修し、国際バカロレア機構の世界統一試験に通ると国際的に通用する大学入学資格(IB資格)が取得できる。現在、国内にはディプロマ・プログラム(DP)認定校は19校しかないが、昨年6月に閣議決定された「日本再興戦略―JAPAN is BACK―」で、2018年までに200校にまでに増やす目標が掲げられた。これも教育再生実行会議の第3次提言(2013年5月28日)を受けて設定された目標だ。

 「国際バカレロアは統一試験の成績次第で、国外のトップレベルの大学に入学できる。同じように外国の学生の入学を認める日本の大学が増えないと国際化で後れをとる」。下村氏は、国際バカレロアの導入推進を文部科学省として全面的にバックアップしていることを明らかにした。

 さらに、下村氏が強い意欲を示したのが、教育財源の確保。先進諸国に比べ日本は教育に対する公的資金投入が少ないという経済協力開発機構(OECD)の報告を引いて、「社会全体で教育費を担保する」必要を強調した。具体的には「学生ローン化している奨学金をまず無利子にして、所得連動型奨学金にすることも目指す」「社会人になってから大学で学び直す人を増やし、生涯現役・全員参加型社会を実現する」「2020年までに3~5歳の幼児教育費を無償化し、5歳から義務教育にすることも検討したい」などの目標を挙げた。

 中国教育省の発表によると、2013年に中国から海外へ留学した人は41万3,900人。一方、日本の文部科学省がOECDなどの統計などを基に発表した数字によると、日本から海外への留学者数は、2010年で58,060人にとどまっている(2014年02月28日デイリーチャイナ「海外留学・帰国者数の増加続く」http://www.spc.jst.go.jp/spcdaily/201402.html_71192263.html#19参照)

 OECDが2008年に公表した報告書によると、日本の公財政教育支出の対GDP(国内総生産)比は3.4%にとどまる。フランスの5.6%、英国の5.0%、米国の4.8%に比べ大きな差があり、データがあるOECD加盟国28カ国中、最低の値となっている(2008年9月10日 サイエンスポータル・編集ニュース「国の教育支出対GDP比OECD加盟国中最低」http://scienceportal.jst.go.jp/news/daily/0809/0809101.html参照)。

また、同じOECDの2009年の報告書では、日本の教育支出における家庭の負担(私費負担)はOECD加盟国中、韓国に次いで2番目に高いとされている( 2009年9月9日サイエンスポータル・編集ニュース「 教育費の家計負担OECD加盟国で最高水準」http://scienceportal.jst.go.jp/news/daily/0909/0909093.html参照)

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関連記事・資料

2014年02月28日デイリーチャイナ「海外留学・帰国者数の増加続く」

http://www.spc.jst.go.jp/spcdaily/201402.html_71192263.html#19

201328日文部科学省「日本人の海外留学者数」及び「外国人留学生在籍状況調査」について

2013年 6月 3日サイエンスポータルチャイナ「現代中国における英語教育―小学校英語教育の現場から―」(新保 敦子早稲田大学教育・総合科学学術院教授)

http://www.spc.jst.go.jp/experiences/education/education_1304.html

2011年1月11日サイエンスポータル・ハイライト「休学のすすめ―日本が求める人材とは」(黒川 清 政策研究大学院大学 教授、前日本学術会議 会長)

http://scienceportal.jst.go.jp/highlight/2011/110111.html

 2009年9月9日サイエンスポータル・編集ニュース「 教育費の家計負担OECD加盟国で最高水準」http://scienceportal.jst.go.jp/news/daily/0909/0909093.html

 2008年9月10日 サイエンスポータル・編集ニュース「国の教育支出対GDP比OECD加盟国中最低」http://scienceportal.jst.go.jp/news/daily/0809/0809101.html

2008年8月20日サイエンスポータルチャイナ・特別レポート「有限の地球での生存戦略」(寺岡 伸章 中国総合研究センター フェロー)

http://www.spc.jst.go.jp/report/200809/report_tera.html

文/小岩井忠道(中国総合研究交流センター)

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